- 山と雪
【特別企画】知られざるアウトドアの楽園・台湾 第二の高峰「雪山」に登ってきました<入山編>
2017.01.09 Mon
台湾第二の高峰をめざし、準備を整え台北を出発しました。台北までの道のりは「申請準備編」をご覧ください。雪山登山のスケジュールはこのように組んでみました。登山口までは割とゆったりめです。山中2泊、台北起点の全4日の予定です。
●雪山主峰(3,886m)の行程
1日目 台北→宜蘭(泊)
2日目 宜蘭→武陵農場→登山口→七卡山荘(泊)
3日目 七卡山荘→雪山東峰→三六九山荘→雪山主峰→三六九山荘(泊)
4日目 369山荘→雪山東峰→七卡山荘→登山口→武陵農場→宜蘭→台北
台湾の登山地図。台北のアウトドアショップで手に入ります
●富士山よりちょっと高い雪山
どうせ登るなら富士山よりも高い山を…ということで決めた雪山。登山口は2,140メートル、山頂は3,886メートルで約1,800メートルの高低差があります。下の図の所要時間は、わたしたちが歩いたときの実際のコースタイムで、休憩時間も若干含んでいます。台湾にも山と高原地図にそっくりな便利な地図、「台灣百岳導遊圖」(全シリーズ20冊)があり、この雪山ルートは「4 聖稜Y型縱走」に掲載されています。地図は、台北の登山用品店で手に入ります。ショップ情報はこちらの記事を参考にしてください。
登山口から雪山主峰往復のおおよその所要時間と高低差です。図右からスタートし、山頂を経て、また登山口に戻りました
今回の「入山編」は、台北出発から七卡山荘までをご紹介いたします。
1日目
●台北から宜蘭(イーラン)へ
まずは宜蘭へ。宜蘭で1泊し、翌朝に雪山登山口がある武陵農場をめざします。武陵農場までは、台北から直行バスも出ていますが、旅気分も満喫すべく宜蘭に立ち寄ることにしました。宜蘭は、台北から60キロほど南にある町で、鉄道かバス(約1時間)で行くことができます。鉄道もバスも予約せずに当日乗車券を購入できますが、時間がある場合は事前に予約あるいは購入しておいたほうが安心です。ちなみに、登山に不要な荷物は台北のホテルにデポさせてもらいました。台北駅に荷物預かり所(有料)もありますが、下山後にまた同じホテルに泊まるならばお願いしてみましょう。
宜蘭にある酒工場。入場は無料。お土産売り場などもあり、売店では生ビールも飲めます
この日は移動のみ。宜蘭のホテルにチェックインした後は、たっぷり時間があったので町を散策、酒造博物館などを見物しました。宜蘭には古くから酒造工場があり、年代ものの建物だけでも一見の価値があります。また、宜蘭の近く(鉄道で駅3つほど)には礁溪溫泉という温泉地があります。今回は行ってませんが、下山後にひとっ風呂浸かるのにはオススメです。
夜市はガード下にあります。台北とは比べものにならないほど小さな規模ですが、旨いものが山ほど!
さて、夕方からは夜市へと繰り出し、屋台を満喫。台北の大きな夜市とはちがって、宜蘭の夜市はこぢんまりとしていますが、やはりなにを食べても絶品です。宜蘭はネギの産地としても有名です。宜蘭に行ったらネギ焼きをぜひご賞味ください!
これがネギ焼き!うまいです。コショウやソースは自分でお好みでかけるスタイル
夜市を満喫し一行はホテルに戻り、翌日からの行程をメンバー全員で確認。当初、山中での天気予報は雨でしたが回復傾向にあり安堵しました。
2日目
●宜蘭のバス停から登山口、七卡山荘まで
朝6時に起床、7時過ぎには宜蘭のバスターミナルへ。バスの乗車券を購入するため、少し早めに向かいました。武陵農場行きのバスは、國光客運というバス会社が運行しています。カウンターのお姉さんに、共通言語がないので筆談を交えて武陵農場まで行きたいことを伝えます。漢字って便利! お姉さんもスマホを駆使して、なんとかわたしたちをコミュニケーションをとろうとしてくれました。
宜蘭のバスターミナル。バス会社が数社入っていますが、行き先によって会社が分かれています
台湾の人はみんな優しいです。往復買った方が安いからと薦められ往復乗車券を購入しました。バスターミナルの周辺はなにもなく、バスターミナル内のコンビニが一軒あるのみです。
バスターミナルにあるコンビニ。武陵農場にも小さな売店がありますが、お酒が買える最後のチャンスはここ!
8時半。乗車するバスがやって来ました。このバスも各座席にUSB端子が完備され充電ができるので快適度は高め。武陵農場までの所要時間は約3時間。山道なのでかなり揺れます。途中一度トイレ休憩があり、お昼前には武陵農場に到着しました。武陵農場は、茶畑や宿泊施設、キャンプ場などがあり、日本でいう上高地のような観光リゾート地です。
武陵農場のバス停から登山口までは、約7キロの舗装路でちょっと距離がありました。この区間は定期バスもなく、山奥なのでタクシーもいません。計画段階からこの区間はネックでした。車であれば20分弱で移動できるところですが、歩くしかありません。3日間の食料や、心配で携行したアイゼンとピッケルもありザックはずっしり。「運良くヒッチハイクできたら……」と、観光客の車にアピールしながら歩きはじめますが、大型ザックを背負った4人を乗せられる車なんてそうそう来ません。歩きはじめて30分。「もう歩くしかないか……」と諦めかけたころ、目の前に1台のマイクロバスが停まりました。「乗せてくれるのか?!」色めき立つ一行。
乗せてくれたマイクロバスのおじさん。英語などは話せないので、片言の中国語でコミュニケーションをはかります
ドライバーのおじさんは、「入山許可証は持っているのか」と、まず確認してきました。持っていることが分かると、有料だけど登山口まで乗せていってくれるとのこと! 神様! このおじさんは、ガイドもしていて、ちょうど人を迎えに行く道すがらだったそう。みかんのような果物までご馳走になり、そしてビューン! あっという間に無事「雪山登山口服務站」(登山指導センター)にたどり着いたのでした。歩けば2時間の道、感謝しきりです!
登山口に建つ、雪山登山口服務站。ここでチェックを受けて入山となります
標高はすでに2,140メートル。心なしか空気は薄いです。遙か遠くには剱岳のようにそびえる南湖大山がくっきりと見えました。この先は登山口のみで、道路はありません。観光客は、この登山口付近まで車で来て眺めを楽しむようです。記念撮影をしている人がたくさんいました。
週末だったこともあり一般観光客が多く訪れていました。デッキは撮影スポットみたいです
「雪山登山口服務站」(登山指導センター)では入山許可証のチェックがされ、安全登山のためのビデオ(10分弱)を見ました。「雪山登山口服務站」は常駐している係員が家族で住み込みで切り盛りしているようで、小さな子どもを抱えてまるで地方の交番みたいなアットホームさ。トイレを済ませ、ようやく山に入ります。
入山許可証を見せてチェックしてもらっています
この日のゴールは、七卡山荘。登山口から1時間ほどです。山荘までの道のりは比較的なだらかな樹林帯、晩秋の雰囲気でした。「これが台湾の山かぁ…」と日本の登山道とさして違いはないものの妙に感じ入ります。
登山道はこんな感じです。看板は読めませんが、漢字でなんとなく書いてあることが分かりますね
歩きはじめて1時間弱、時刻は午後2時を回っていました。七卡山荘に到着するとすでに先客が数名。小屋番のお兄さんに入山許可証を見せると、ベッドを案内されました。七卡山荘は基本的に自炊でシュラフなどの寝具は持参しなければなりません。どちらかといえばよく整った避難小屋。さまざまなホスピタリティがある日本の山小屋とは違います。山荘にいたこのお兄さんも常駐ではなく、小屋番は交代でしているようでした。
七卡山荘。標高2,500メートルに位置しています
でも山荘には、水道(念のため煮沸して使用)もありトイレも水洗。炊事場にはテーブルとイスがあって広々としていて快適です。七卡山荘の収容人数は130名。上下段に分かれた簡素な寝床ですが、人数も少なかったせいか窮屈さは感じずとても過ごしやすかったです。山荘は申請準備編でも触れた通り、予約が必要ですが無料で使用できます。
七卡山荘の内部。上下段に分かれています。ベッドの床には薄い黒いマットが打ち付けてありました
食堂のような炊事場。壁側の棚のようなところで火を使います
到着後は荷を解き、のんびり外で一杯。ちょうど日曜日ということもあり、下山していくパーティをたくさん見かけました。12月といえば日本はすっかり冬ですが、台湾は秋で山登りにはベストシーズン。今回の入山申請が瞬殺で埋まったのもうなずけます。見かけた登山者の装備は、思いのほか軽装な人もいました。
酒の友、おつまみセレクション。バスターミナルのコンビニで買ったワインは1つ100㎖で瞬殺でした……。ネギクラッカーはチーズと相性抜群。チーズは日本の半額以下なので行動食にオススメ。カボチャの種もクセになります。ビーフジャーキーは個包装されていて携行向き。お酒以外は台北のカルフールで購入
南国の台湾とはいえ、標高もそれなりに高いことから雪が降ってもおかしくないのでは? という心配から、念のためピッケルとアイゼンを携行していましたが、どうやら大丈夫のようです。翌日以降も晴天がのぞめたことからも、ピッケルとアイゼンは七卡山荘にデポしていくことに。小屋番のお兄さんに相談すると、荷物に持ち主を明記して置いていくように言われました。降雪の時期については、なかなか有益な情報がつかめませんでした。季節の変わり目の場合は、念のため携行して現地で判断するのがよいと思います。
まるで刀を研いでいるような形相ですが、夕食のビーフンを作っています
この日、七卡山荘に泊まっていたのは20名ほどで、大半は台湾の方々。外国人はわたしたち日本人と、あとはオランダから来ていた青年グループでした。
18時には夕食。消灯は20時とのことでしたが、通路などの電気は点いたままでした。翌日にそなえ、消灯とともに就寝です。翌3日目は三六九山荘を経て、雪山山頂をねらう10時間以上の長丁場。翌日からがある意味、本番とも言えます。
(登頂編へと続く)