- 山と雪
【大学ワンダーフォーゲル部×ドイター】第1回・慶應義塾大学ワンダーフォーゲル部と行く日帰り焼岳登山
2021.04.05 Mon
桑田実結 女子大生ハイカー
大学のワンダーフォーゲル部ってどんな活動をしているのだろう? どんな学生が集まっているの? そんなふとした疑問から、取材を思い立ったこの企画。第1回目となる今回は、創立85年になる名門・慶應義塾大学のワンダーフォーゲル部のみなさんの活動におジャマさせていただくことに! 行き先は、北アルプスに位置する百名山の焼岳。いったいどんな登山になるのか、わくわくしながら同行しました。
登山メンバーは4人。気さくで明るい雰囲気の学生さんたちです。
まずは今回、協力してくれたメンバーのご紹介。先頭を歩くのは、2年生で理工学部の北川 峻(きたがわ しゅん)さん。ペース配分を決めたりと、休憩のタイミングや時間を管理する練習としてずっと先頭を歩きます。今回は、ドイター(deuter)の「スピードライト32」(*1)を背負ってもらいました。
(*1) 2021年より取り扱いなし。
2番目を歩くのは同じく2年生で理工学部の吉田マルガリータさん。今回唯一の女子部員。2021年にリニューアルしたドイター「フューチュラ30SL」を背負っています。女の子だからといって侮ることなかれ。水を10ℓ背負っての登山です。同期ふたりで先頭を歩きながら、時折相談しつつ進みます。
そして、3年生で商学部の志賀 翼(しが つばさ)さん。今回のリーダーです。聞けば、活動を引っ張るのは3年生というのが部内での恒例なのだそう。上級生として企画を立て、リーダーを務めるには、クリアすべき課題があります。部活動としての登山にはステップアップを支える仕組みがありそうです! 2021年新作のイエローカラーのドイター「フューチュラ32」を背負っています。
最後は4年生で文学部の佐藤駿成(さとう としなり)さん。 日帰り登山なので基本的にみな、荷物は少なめだったのですが、彼は「スピードライト32」(*1)にいっぱいの荷物を入れ、最後尾を歩いていました。部活動として登るときにはファーストエイドなど、もしもに備えたアイテムは必須。そのための装備だったようです。
(*1) 2021年より取り扱いなし。
さっそく登山開始! ワンダーフォーゲル部の登山スタイルが気になる!!
今回歩いたのは、新中の湯登山口から焼岳山頂をピストンするコース。念のため、と地図を見つつ、しっかりと道のついたルートを歩きます。
ふだんの活動について聞いてみると、部のなかでもさまざまなジャンルの登山をしているそう。そのなかでも、「藪漕ぎ」と呼ばれる、登山道がついていない場所を地図とコンパスのみを頼りに進む登山では「地図読み」が必須。地図をちゃんと見させるのはそのための練習のようで、まちがえることがないよう先輩はうしろから見守ります。
部活動らしさを感じつつも、雰囲気はなごやかで楽しそう。先ほど紹介した「藪漕ぎ」のほかに、ロープを使わない「沢登り」や「縦走登山」が夏山のメイン。夏のメインとなる合宿を計画したら、参加するメンバーでチームを組み、夏までそれを登るためのトレーニング登山を重ねます。個人で楽しむ登山より、「チーム感」が仲のよさとステップアップの秘訣のようです!
活動のしかたについて教わったり、最近買った登山用ウェアの話に熱中しているうちに、登山道の様子が変わってきました。序盤の樹林帯を抜け、これから登る岩の多い登山道を仰ぎ見ます。「アルプスっぽい!」という私の呟きから、志賀さんが「はじめての北アルプスなんです」のひと言がありびっくり。沢登りをメインにする志賀さんは、いったいいままでどんな山に……?
それもそのはず、ふだんよく行く山を聞いても、好きな山を聞いても、山の名前よりも沢の名称が先に出てくるくらいの沢好き。これまででよかった沢は、大峰山脈にある孔雀又沢。活動で毎年行く薮はマイナー12名山(*2)だそうです。一般登山者がなかなか足を踏み入れない場所に、ふだんから出かけているのですね。
(*2)『岳人』編集部によって選定された「四季を問わず創造的登山をしなくては登頂できない名山」。たとえば、巻機山の近くにある「ネコブ山」。知ってますか!?
山頂手前で、一瞬の晴れ間。予想以上の天気で展望がひらけ、一気にテンションが上がります。まさに高山! といった感じの天気のうつり変わりに、感動をしつつ登っていきます。
苦しい顔も見せずによいペースで順調に進んでいく部員たち。山頂のすぐ下の岩場までもあっという間でした。もくもくと立ち昇る蒸気をみて「硫黄のにおいってよくいうけど、硫黄はほんとうは無臭。これは硫化水素のにおい!」と学生らしい小ばなしも飛び出しました。大学生、山の上でも自分の専門知識が役に立っています。
ついに焼岳山頂に到着! コースタイムをはるかに上回るペースでの登頂ですが、この通り涼しい顔です。
今までのバックパックと比べてどう? 使い心地を聞いてみました。
今回4人に使用してもらったのは、ドイターの「フューチュラ32」とそのレディースモデル「フューチュラ30SL」、「スピードライト32」のバックパックでした。
「スピードライト32」を使用した北川さんは「日帰り用バックパックで、背負いやすく、かつこんなに軽いものははじめて」と感嘆。軽いバックパックは背負心地がよくなかったり、重さに弱かったりと、これまで苦労してきたようです。
これまでの登山では、テント泊で日数も多いため大型バックパックを使ってきたというマルガリータさん。荷物が重いという要因もあると思いますが、自分の肩にあまり合っていなかったと感じることが多かったそう。「今回背負った “フューチュラ30SL” は痛くならなかった!」とステキな笑顔で教えてくれました。
荷物が少ない日帰り登山でも、手を使って登り下りする岩場のあるルートでは、背中へのフィット感はやはり大切です。また、強者ぞろいのワンダーフォーゲル部のみなさんのような登山では、スピードも必須。その際に、背面がしっかり固定されること、重さを感じにくい設計であることは、大きなメリットになりそうですね! 今回、早いペースで登れた要因は、トレーニングの成果だけでなく、高いフィット感のバックパックにもありそうです。
いちばんのベテランである佐藤さんはドイターのヘビーユーザー。もともと、ドイターのバックパックは背面がしっかりしている、という印象を持ってくれていたそうのですが、最新のバックパックは、より進化していることに驚いたそうです。リニューアルを繰り返し、どんどんバージョンアップしているバックパックの進化から、目が離せません。
お話を聞いているうちに、山への思いが伝わってきました。
早めの下山となったので、のんびり温泉に。これからの登山の予定など、山の話に花を咲かせていると、部活動で本格的に登山をやっているからこその野望も聞くことができました! 印象的だったのは、ワンダーフォーゲル部での登山は、学生のいまだからこそできるものだと口をそろえていたこと。
部員が60人ほどいる慶應義塾大学のワンダーフォーゲル部では、その分、登山のジャンルも多様です。部では、まず自分のやりたいジャンルを選び、OBをはじめとする先輩に登山計画を通すというプロセスを踏み、準備として多くの登山経験を積みます。ひとりではなかなかできない登山へとステップアップできる部活動を、みなさん楽しんでいるようでした。
お話を聞いていると、卒業後も山を続けたい、さらにむずかしい登山をしたい、と夢は広がっていきます。学生生活で山にのめり込んだ経験は、今後の登山人生をきっと多彩にしていくのだろうなと感じさせられました。
日帰り登山とひと口にいってもスタイルはさまざまです。自分に合った機能を備えたバックパックを選ぶことで、登山はもっと快適になりそうですね。ご協力、本当にありがとうございました!
※学生4名の学年は2020年度のものです。
(撮影協力:慶應義塾大学ワンダーフォーゲル部 写真:Chica Suzuki 文:桑田結実 編集:河津慶祐)
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